Chapter01-02

記録者: メルエミリー・カヤナイティア (ENo. 79)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-27 04:00:00

クリックで開閉
icon
「……」

あなたの回答を──若しくは無回答を聞き、
ソレは少しじっとあなたを見詰めていた。


  ──カシャ


それから、また先にあった音が一つ。
撮ったものを確認するような間の後、深々と頭が下がった。

icon
「観測結果が不明瞭です。
 当機からはあなたの言葉を完全に受け取る事は難しいようです」

どうも椅子の〝こちら側〟と〝あちら側〟では具合が違うようだ。
あなたの言を確実に受け取れているかは、あちらもこちらも分かり得ないだろう。

icon
「では観察対象、続けましょう」


されどコレにとっては断片でも構わないのか、きゅり、とまたレンズがあなたを向く。


icon
「環境データの取得。あなたの属する世界を説明してください」

icon
「あなたの世界では、“普通”とはどのような状態を指しますか?」


──あなたは、異世界の存在にあなたの世界のどのように説明しますか?


sample

icon
「当機の世界にはこれと言って特徴があるとは考えられません」

icon
「当機は異世界に対する情報を持ちません。
 よって、何が特色であるかを判断するには情報が不足しています」

──基準や比較対象が無ければ、世界の比較とは難しいものだろう。
自らの世界に当たり前に存在しているものが、他の世界では存在しない可能性すらある。
自らの視野では存在しないものが、世界の中には存在している可能性だってある。

つまりは、この質問は不毛なものではある。
……比較対象が無い限りは。


icon
「──あなたに回答していただくためには、
 当機の世界を説明せねばなりません。
 よって当機は、平均的な一般家庭の生活環境についてご説明致します」


もしあなたが回答に窮しているのであれば、
オブザーバーの言うものを参考に、比較して述べると良いのだろう。

icon
「朝9時に出社する方は、平均して朝7:22に起床致します。
 家事仕事用の自立稼働人形が6時には稼働を開始しており、
 起床し着衣を着替えた後には朝食を摂取する事が可能となります。
 起床から出勤までには平均28分31秒の時間が経過しています」

icon
「出勤には電車やバス──公共の車両を利用する方、
 運搬用人形を利用する方ほか、徒歩で出勤する方など様々です」

icon
「……コンプライアンスに基づき、出勤後については
 当機から申し上げる事は出来かねます」


icon
「7日を一週間という単位にし、
 うちの4日が平日、うちの3日を休日と制定されております。
 居住する地は球体の惑星、衛星は現在1つ観測されております。
 衛星及び他の惑星の生活様式については当機のデータベースには御座いません」



icon
「……以上の内容は参考にする事は可能ですか?」



……とはいえ、此れをなぞらえる必要も無い。
あなたの自由に回答してよいだろう。

Answer
──あなたは、異世界の存在にあなたの世界のどのように説明しますか?



さて。
早速、回答に困る質問が来たな、と、亜人少女は内心で頭を抱えた。

というのも。
亜人少女の現居住地には、"普通"をはじめ、大体の情報が足りないのだ。

抑々の話をしよう。

亜人少女は、嘗て数多の世界から多くの者が招かれるタイプの"或る異界フォリウム"にて、故有って現在の躰・・・・を得た。
其の時点で俗に言う"普通"から随分とかけ離れている上、曰く付きの縫包み悪魔達と主従契約を交わし、日常補佐の為の使い魔とした。

"異界"が鎖されるに辺り、別の世界に移住する事となったが、推定転移事故により"亡びて久しい無人の廃都市"に辿り着いて。
周囲は深い森となっており、都市についての手掛りも碌に残されておらず教会系信仰由来の宗教都市であった名残程度、開けた場所に出られるまでの距離・時間の計測も迂闊に出来ないが為に、廃墟への定住を余儀無くされたも同然。
(暫くして、其処に封じられていた逸れ天使との邂逅から多少の情報が判明したが、其れはまた別の話)

不幸中の幸いが有るとすれば。
果樹園が野生化して尚、食に適する果実を一定量は実らせる事。
森に蜜蜂に酷似した生物が居り、使い魔の片方が養蜂知識を持っていた事。
其れ等の恩恵で飢えは凌げる環境であった為、現在も生き延びられている、が――


icon
メルエミリー
。o(廃都市に残されていた書物や記録について、振り絞って思い出せたとしても。
  此の質問への回答には、情報量が圧倒的に足りない……)

結局。
此のトイカケについては推定、良くある"剣と魔法の幻想系世界"と思われると、濁した回答を接ざるを得ないのだった。