Chapter01-04

記録者: アラビク・ハン (ENo. 167)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-03 04:00:00

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「では観察対象。それを踏まえて、次の問いです」


シャッターは下りないまま、
ただピントを合わせるようなジジ、という小さな音だけが聴こえてくる。

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「あなたの価値観を測ります。
 ──あなたにとって譲れないものは何ですか?
 自由でしょうか、信頼でしょうか、愛情でしょうか、それとも秩序でしょうか 」

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「その理由も含めて説明してください。
 対象や状況が変わった時、
 あなたの答えはどのように変化するでしょうか?」


──あなたは自らの価値観をどのように認識していますか?

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「譲れないもの、とひとえに考えても即座に思いつかぬ場合もあるでしょう。
 自由、信頼、愛情、秩序、誇り、忠誠、知識……無数の選択肢が考えられます。」


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「当機は観測を第一義として設計されています、
 どのような思考をせど、必ず『観測』という目的を前提に持ちます。

 これは精神的価値としての『誇り』や『忠誠』とは異なります。
 しかし、機能としての観測が揺るぎ得ない前提であるという点では、
 それらに類する不変性を持つと言えるでしょう」


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「思考の前提、当然と感じている事、
 それこそ、先の思考を組み立てる際に自らが重視したものを改めて噛み砕くと良いのやも知れません」


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「回答は単一である必要はありません。
 譲れない価値の間で揺れる感情や葛藤も、重要な要素です。
 必要に応じて検討を続けてください」

Answer
予想していたカシャ、という記録音はなく、それを踏まえて、と話が続く。
次の問いは、価値観。自分にとって譲れないものとはなにか。
これもそう難しくない、というかこの思考実験は経験済みだ。

牢につながれ、次の責め苦を待つ間、
考えるくらいしかやることがない日々はそれなりに長かったのだから。

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自由。
 すなわち価値観を自分で考え、決められること、と答えましょう」

するりと言葉が出る。

そう、自分で決めたことだから、後悔はなかった。
それはそれとして首謀者どもは始末したがね、と、マフラーの下でサメのように笑う。


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「われながらシンプルな回答ですが……。
 これに関しては、付け加えることはありませんね。
 ぼくは自由であることを重要視していますし、
 親しい者たちにも自由であってほしいと考えています」