予想していたカシャ、という記録音はなく、それを踏まえて、と話が続く。
次の問いは、価値観。自分にとって譲れないものとはなにか。
これもそう難しくない、というかこの思考実験は経験済みだ。
牢につながれ、次の責め苦を待つ間、
考えるくらいしかやることがない日々はそれなりに長かったのだから。

「自由。
すなわち価値観を自分で考え、決められること、と答えましょう」
するりと言葉が出る。
そう、自分で決めたことだから、後悔はなかった。
それはそれとして首謀者どもは始末したがね、と、マフラーの下でサメのように笑う。

「われながらシンプルな回答ですが……。
これに関しては、付け加えることはありませんね。
ぼくは自由であることを重要視していますし、
親しい者たちにも自由であってほしいと考えています」