カシャ、とシャッターが切られる音がした。
記録しました、ときたか。
記録であれば、閲覧する者がいるはずだ。
やはりいいかげんな回答はするべきではないな、と居住まいを正し、次の質問を待つ。
世界について聞かれたあとは共同体なりについてかな、と考えたが、どうやら的外れだったようだ。
投げかけられた質問の内容は、“簡単な思考実験”。
窮地に陥っている目の前の人物に対してどう行動するか。さて、どう回答したものか――
――これはあれだな。聞いたことがあるぞ、と内心独りごちる。
“あいつ”が旅に出る前、夢でなんやかや聞かれたと言っていた。
なんでもえらく無遠慮な質問ばかりされ、
あげくの果てにあなたはどういう性格ですねと決めつけられたとか。
じゃあなにか、ぼくもこれから世界を救う旅に出るのか?と考え、
アホらし、とその思考を放棄した。
世界ならとっくに一度救った、二度めはごめんだ面倒くさい。
だいたいいまは他にやることがある。
世界なんぞ知ったこっちゃない、救って……いや、どやしつけてやりたい子がいるんだから。
――まあ、別にそう難しい質問じゃない。
こういう話なら冒険仲間、商人仲間と何度もした。
とくにひねらずそのまま答えるとしよう。

「そうですね、基本的には助ける方向で行動しますが。
その前にまず観察します」

「最初は――その彼が、本当に困難な状況にあるのか。
それはこちらをだますためのフリではないのか?」
なにせぼくは商人ですからね、価値のある財を持ち運んでいます。
それを狙うものはいくらでもいます、用心するに越したことはありません、と補足する。

「次に考えるのは、僕が被る損害の程度ですね。
被る損害が回復不能なものだと予想されるのなら、申し訳ないですが助けません。
そこまでする義理はない、というやつです」
損得度外視で助けたくなる相手もいなくはないでしょうが、
今回は一般ケース、見ず知らずの相手という前提で話を進めます。

「まあ、なんやかや判断基準はありますが。
要するに、基本的には助ける方向で行動する。
でも、自分や仲間が危険なら助けない、ことを進言する。
こうですね」
ま、どうせ結局助けることになるし、面倒事を背負い込むことになるんだろうけど。
それを言うのが僕の役割だったのさ、と心の中で肩をすくめるでしょう。

「以上の内容でご満足いただけるでしょうか?」