あなたの話を聞き終えて。
変わらぬ体勢と手の仕草のまま、女はふっと笑った。
その笑いは小さく、肩の力を抜いたような、けれどどこか柔らかい余韻を含んでいる。

「……うん。なんかちょっと、
スッキリしてきたかもな」

「とかまー……うだうだ考えても、
結局変わらない毎日がまた続くんだけど、さ。
こうやって……無益かも知れなくても、考える事って、やめちゃ駄目かもなって思うんだ」
手元で絡めた髪をそっとほどきながら、軽く肩をすくめる。
視線は遠くに漂わせつつも、ほんのわずかにあなたのほうを向いている。

「……ここまで話して、完全にウチの妄想だったとかだったら
恥ずかしいな……。ま、いっか」

「あー……そろそろ目が覚める気がする。
じゃーね、クロ。またどっかで会えたらいーね」
ふあ、と女が欠伸をひとつしたのに合わせて、あなたの視界もぼやける。
まるで風に吹かれるように、白い空間の輪郭が溶けていく。
重みに耐えかねてひとつ瞬きをした後には、もうそこに人の姿は無かった。
それで、次に瞬きした後には。
あなたはあるべきところに戻っていたのだろう。
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