あなたの言葉に黙って頷きながら、
思考を深めるように髪を弄る手の動きは止まっていた。

「……価値、なんて偉そうな言葉を使ったけどさ」

「結局、自分がその生き方で満足できるかどうか、
みたいな話、な気もしてくるね」
短く言葉を切りながら、息を吐く。
沈黙は、ただ心の中を整理する時間のようだった。

「どうすれば、満足って思えるんだろうね」

「もちろん、簡単に“ああ、これで満足!”って思えれば楽なんだけど……
現実はさ、どんどん次が出てくるし、思い描く理想と現実の間に隙間があって……」
小さく肩をすくめ、思い出したかのようにまた手が髪を弄った。

「もうこれでいいって思える瞬間……、
クロは、経験ある?……どうすれば自分が満足できるかって、分かる?」
──あなたにとって“満足”とは何だと思いますか?
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「……“満足”って多分、別にゴールじゃないんだよね」

「結局“ああ、今ここで自分のやりたいことできてるな”って瞬間のこと……なのかも。
誰かに褒められたり、認められたりすることだけじゃなくて、
ただ自分の心が納得してるっていうか」
髪を指先で絡めた手をそっと下ろし、視線を落とす。

「だから、ウチにとっての満足って、“ずっと続くもの”じゃなくて、
小さくて短いけど、自分の心にちょっと灯がともる瞬間のこと……かな、と思う。
其れを積み重ねられる可能性が高い行為を、価値、と呼べるのかもなぁ……」
軽く息をつき、椅子にもたれて肩の力を抜く。
ふ、と視線があなたに戻り、問いかけるように目が揺れる。

「クロはさ……そんな瞬間、ある?
自分の中で、これでいいって思える瞬間って、どうやったら掴めると思う?」