
ひとみん
「はぁ????」
まただ。なんで?や、そうか、それで…という考えとは裏腹に、また口をついて出たのがこれだ。
まあ…不明瞭ということは要するに、要所要所がボケて聞こえない、なんて感じなのだろう。
さっきピントがうまく合わせられないような動きをしていたのも、おそらくこれが原因だと推察する。
実にめんどくさい。
というか…、こっちから見えるオブザーバーは、不明瞭なんてことはないから……それってつまり……オブザーバーが壊れているんじゃないか……?
これって、つまりは、もしこいつが壊れていると仮定してみると…記録もちゃんと出来ているかどうかすらわからないということではないか。
大丈夫か…?
…こいつ、修理してもらった方がいいんじゃないか。
…というか、構造がその辺の機械と同じなら私も修理できるが。
なんだか色々考えが巡るが、それを掻き消すようにまた深呼吸を一つしたのち、口を開く。

ひとみん
「………………フゥ………観測できないならここでやめてもいいんだぞ……」
立った気持ちを落ち着かせるべく、自分を宥めるように発した。
正直、向こうに伝わり切らないのであれば、これ以上話すのも…と思っていた。
だが、オブザーバーからは続けるという答が返ってきた。
いや、今すぐに修理してもらえよ、という言葉を飲み込んだが…、その状態で今、このまま続けて記録の意味があるのか…?
まあ…いいか、やることも特にないし…
…ふと、さっきはオブザーバーに気を取られてしまっていたが、また質問を聞きながら今度は周辺を見回してみる。
…特に変わった様子もない。真っ白な空間が続いているだけ。私はがっくりと肩を落とした。
……これじゃ帰れないじゃないか。
…帰る…?いや…別に私は帰れなくてもよくないか?だって、帰れなかったら借金も犯罪歴も全部全部チャラになるわけだし……?
…いやでも、心が帰らなきゃと叫んでいる。なんで?
………………頭が痛い。頭の中のモヤが濃くなってきた気がする。
私は……帰らなきゃいけない理由があった、そのはずなんだ………なのに……

ひとみん
「………………〜〜〜〜〜ッ、………あ、すまない、え〜〜っと何だっけ、こっちでの普通…?だっけか。」
何もできない以上、今は目の前のことへ集中する方がいいだろうと私は判断した。
イライラが収まらない。一体これは何なんだ?

ひとみん
「ん〜そうだな、私の世界での普通なら…、生まれたら親に世話をしてもらって、大きくなったら学校に行って、大人になるために勉強して、大人になったら育ててくれた親に恩を返すために働く…っていう生き方をするのが普通じゃないかと思うぞ」
かなりざっくり説明だが伝わるだろうか…?……いやまあ、正直思い出せないことに比べたらこの辺の普通の定義なんてどうだっていいのだけれど。
…親孝行といえば。私は親に、大変な迷惑をかけたことを思い出していた。
一生懸命片親で育ててくれたのに、私は最終的にはこんなになってしまった。

ひとみん
「時間の流れとかは…こっちと同じみたいだな。働き方については人それぞれに普通があるから一概にこうとは言えないな。週休2日だったり、毎日働いたり。逆に週1で働いたり。仕事が入った日だけ働く…ってのは私の働き方だな。」
感じていた罪悪感を思い出して辛くなる。……けれど、なんだか、親へ迷惑をかけたなんてことを言いながら、ヘラヘラ笑っていた"誰か"が今、脳裏に一瞬チラついた気がする。
知り合いにそんなだらしないやつなんていなかったはずだけれど…?
けれども、ふと脳裏に過ったその瞬間、胸の奥が温かくなって、締め付けられたように感じた。
なんだ…なんなんだ…?思い出さなきゃいけない気がするのに、これ以上出てこない。
そのせいか、苛立ちの波はまた勢いを増す。……とっとと終わらせないとまたこいつに八つ当たりしちまう。
また一つ、深呼吸をして荒くなった感情の波を宥めつつ、オブザーバーに向かって睨みをきかせて私はこう伝えた。

ひとみん
「……他に質問があるならとっととしてくれ、アタシはもう疲れた…」