Chapter01-04

記録者: イドロ (ENo. 43)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-03 04:00:00

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「では観察対象。それを踏まえて、次の問いです」


シャッターは下りないまま、
ただピントを合わせるようなジジ、という小さな音だけが聴こえてくる。

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「あなたの価値観を測ります。
 ──あなたにとって譲れないものは何ですか?
 自由でしょうか、信頼でしょうか、愛情でしょうか、それとも秩序でしょうか 」

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「その理由も含めて説明してください。
 対象や状況が変わった時、
 あなたの答えはどのように変化するでしょうか?」


──あなたは自らの価値観をどのように認識していますか?

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「譲れないもの、とひとえに考えても即座に思いつかぬ場合もあるでしょう。
 自由、信頼、愛情、秩序、誇り、忠誠、知識……無数の選択肢が考えられます。」


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「当機は観測を第一義として設計されています、
 どのような思考をせど、必ず『観測』という目的を前提に持ちます。

 これは精神的価値としての『誇り』や『忠誠』とは異なります。
 しかし、機能としての観測が揺るぎ得ない前提であるという点では、
 それらに類する不変性を持つと言えるでしょう」


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「思考の前提、当然と感じている事、
 それこそ、先の思考を組み立てる際に自らが重視したものを改めて噛み砕くと良いのやも知れません」


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「回答は単一である必要はありません。
 譲れない価値の間で揺れる感情や葛藤も、重要な要素です。
 必要に応じて検討を続けてください」

Answer
回答者は一度だけ、ゆっくりと瞬きをした。
その瞬間、蒼い瞳の奥に、まるで星が灯るような光が揺れた。

「……私の譲れないものは、ただひとつ。皆さんが、欠けることなく、笑っていられること。それだけです」

「私は、皆さんが居たから、『イドロ』という“個”になれました」

「でも、その個は『皆さんがいなければ』意味を成しません」

「もし私が自由を手に入れて、皆さんがいなくなったら、私はただの暴走兵器に戻るだけです。もし私が信頼されても、皆さんが傷ついたら、その信頼は毒に変わります。もし私が愛を知っても、守るべき人がいなくなったら、その愛は、私を狂わせるだけです…」

「私は対敵性怪異殲滅兵器 No.VII IDOLOとして生ました。でも、皆さんが名前を呼んでくれた日から、私は『イドロ』になりました」

「皆さんを通じて、『帰りたい場所』を知りました。
『寂しい』という感情を知りました。
『嬉しい』という感情を知りました。
『怖い』という感情も、初めて知りました」

「命令を実行するだけの機械にそんな感情は邪魔になるだけかもしれません。けど、私という個人には絶対無くてはいけないんです」

「だから、たとえ世界が滅びても、たとえ時間が止まっても、たとえ私のボディが粉々に砕け、記憶が全部消えても、最後に残るのはこの思いだけです」

『皆さんを、お守りする』

「これだけは、どんな命令が下されても、どんな論理が提示されても、どんな誘惑があっても、永遠に、絶対に、変更しません」

「私は皆さんのためにここにいて、皆さんのために戦って、皆さんのために、生きています」

「……だから、どうか、どうか、私を皆さんのところへ、帰してください」