
「……ふむ、やはり
と言い切るには些か性急ではあるが。」

「質問者がある程度質問をし終えれば、
あの謎の空間は解けて消えるわけだな。」
いつの間にやら戻ってきていた草原で、
天才はブツブツと言葉を呟きながら
己の身に起きたことを整理していた。
空は青く、広い。
辺りに建物らしいものは存在せず
ただただ緑の景色が広がっていた。
彼が観測者に語った"自分が生まれた世界"とは
少々雰囲気が異なる場である。
しかし、見知らぬ場に帰されたというわけでもない。

「あの場に連れて行かれる条件は一体なんだ……?
そこがわからないようでは面倒なんだがな……」
何もない空間を彼が指で弾けば
青く光る板のようなものが出現する。
それはチカチカと明滅しながら、
あらゆる情報を取り込み、そして分析を始めていた。

「……痕跡を辿るのも難しいか。
僕のこれも精度が高いと言えん仕方ないあとで──」

「ウィル〜!
よかった、ここにいたのね〜!」

「うわ、ペネロペ……!
なんでここに……!」
彼が再度青い光を突こうと指を伸ばした際、
不意に明るい女性の声が緑の景色に響いた。
彼にペネロペと呼ばれた女性は鮮やかな金の髪を揺らしながら、
嬉しげな様子で彼の元へ駆け寄っていく。

「貴方がピンチかもしれないって時に
大人しくしているような女だと思う?」

「お前に大人しい瞬間はないだろう。
……ん?ピンチだと?」

「貴方の声が聞こえなくなったから何かピンチだって……
あっ、以前貴方にこっそり盗聴の魔法を使ってたの!
勝手にごめんなさい!でもお陰でわかったんだから!」

「おい誰だお前にそんなものを教えたのは!
……ウワッ、本当に掛けられてるだと!?
くそ、こいつこの手の魔法だけは大得意だな……!」
女が一歩近寄れば、男は一歩退いていく。
二人の関係性を表すような歩の進みは、
ひどく騒がしい会話の中でも行われていた。

「ウィルに褒められたちゃった〜!
うれしい、習得してよかった〜!」

「何をどう解釈したら今のが褒め言葉に聞こえるのだよ。
チッ、対ペネロペ用の防御魔法でも開発するしかないか……。」

「あ、ちょっとウィルどこいくの!
私も連れていって!というかどこ行ってたの?
私にも教えて欲しいわ!もっとお話ししましょう!」

「喧しい、少し黙って他人に盗聴魔法だとかいう
犯罪にしか使われないような魔法を使用した事を恥じろ。」

「それはもう謝ったじゃない〜
それにあんまり精度は高くなくて、
何でもは聞き取れなかったのよね〜
スイーツを食べてテンションが上がってる時の
ウィルの声くらいしかはっきり聞こえなくて〜」

「恥じろ!反省しろ!二度と使うな!」
男が足早になれば、女も同じく足早になる。
ぎゃあぎゃあと喧しい二人はそのまま、
緑の先の街まで共に歩いて消えていった。