Chapter03-03

記録者: Πολύτιμος λίθος ρουμπελίτης (ENo. 204)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-03 04:00:00

クリックで開閉
icon
「……そっか」

一言だけをぽつりと落とし、その後の言葉を探すように目が泳ぐ。
何かを言えば軽くなってしまうし、黙れば重くなる。
その中間を彷徨うような視線の動きだった。

icon
「いや、なんかあんま気の利いた事言えないや。
 テキトーな相槌を簡単に言うのは失礼っていうかさ……」

女は椅子にもたれかかり、髪を指で弄りながらぼやくように言葉を零す。
……指先で“間”を誤魔化しているようだった。

icon
「……じゃあ、さ、クロ。
 クロって誰かに期待されたりすることって、ある?」

icon
……誰かに期待されてるって思うの、疲れない?


──あなたは、“期待”に対してどのような感情を抱きますか?


sample

icon
「ウチさ、親とか先生とか、あと周りの人とか……
 期待されるとさ、なんかこう……自分のペースで動けなくなる気がして」

icon
「でもさ、期待されるのって悪いことじゃないのも分かるんだよね。
 褒められたり、認められるのって、ちょっと嬉しいし……」

言葉はゆっくりと紡がれていくなか、指先だけが落ち着きなく動く。
笑っているような、笑っていないような声だった。

icon
「けど、期待ってさ、“応えられなかった時の怖さ”までセット販売なんだよね。
 おまけに“努力不足に見られちゃうリスク”付き」

icon
「嬉しいのに疲れる。
 ありがたいのになんか苦い。
 クロはそういうの、ない?」

Answer
icon
「期待……期待、ですか。
たしかに、立ちふさがる敵に手も足も出なかったときは、申し訳ない気持ちになりましたけれど…」

icon
「それ以上のことが起きるわけではないからな…僕らはね。
何かを得るために動いているわけではないし…物々交換で利益を得るわけでもないしな…
住みやすい環境を選択することはあるけれど、たいていは皆、そこが居心地が悪いと思えば、旅に出てどこか別の世界に行ってしまうから」

icon
「そうなのですよね。
私は今では、どこかの世界に召喚されて力を求められることもありますから、その時は期待に応えようって思いますが…
相手の魔力だとか力量に応える形で喚ばれていますから、正確には、術者の魔法の範囲内の働きなのですよね」


icon
「期待…期待といえば、僕が今していることは『期待に応えようとしてる』のかな」

icon
「ああ、コ…えっと、お嫁さんの相応しい伴侶になりたい、っていう、『人間の旦那様としての期待』ですね!」

icon
「……最初にその『お嫁さん』を広めたのって誰なんだよ…」

icon
「あら。貴方自ら『あの子に手を出すな』って言ってたじゃないですか。ですから私たちは、貴方が人間の女の子をお嫁さんとして娶ったのだと…私たちの世界では、人間と結ばれるとはそういうもので……」

icon
「もういい、わかった。
……そういうのも『期待』だし『責任』だよな。人間の世界では一生をかけた大事な契約だっていうし、期待の大きさで言えば相当かもね?」

icon
「『期待』を『どう思うか』でしたっけ」

icon
「どうも、何も。
僕は彼女に約束したから。
絶対君を幸せにするって。
だから苦しいものでも辛いものでもないよ。
彼女がそれに応えてくれているのだから、僕はその期待が消えないように、ずっと幸せに…」

icon
「……っぁ…この話、ここまででいいかな?」

恥ずかしい話をしている自覚が出たため、言葉が出なくなったようだ