
「悪さ…ですか。
人間の基準と、私たちの基準とは、だいぶ違いますからね…」

「すごくわかりやすいところで言うと。
宿る花を根絶やしにされると、困るよね」

「そうですね。そのために私たちは、時間と空間を旅する力を身につけたようなものですし」

「私たちは永い時を居続けられたとしても、宿る花がそのままその場所に、永く生え続けられるとは限らないのです。
品種が変わっていったり、種を増やしていったりする逞しい植物であればまだよいのですが、どんなに長寿な大木であったとしても、そこに存在するからには、いつかは消える時が来ます」

「ですから、私たちは一つ処で暮らしたまま消滅しなくてもよいように、別の場所へ移るすべを身につけました。
人間のように遠い距離を渡れるように。人間と同じ姿で、ともに暮らせるように。そしてその世界ではもう生き物が過ごせなくなったとしても、似たような植物さえあれば、別の居場所を求めて旅ができるようにと」

「それでも、それは永遠に出来ることではありません」

「行き場を失ってしまえば、私たちは消滅してしまいます」

「だから主様のように旅を重ねるものがいる。それとは別に僕のように、完全に人間の世界に入り込み、共に過ごすものがいる」

「僕らが存在すること、花の在りようのままに居続けることが『正しい』存在の仕方であるならば。
それが出来なくなる…『その花が消えてしまう』ことが僕らにとっての『悪』になるんじゃないかな」

「ま。
僕はそれだけじゃなく、彼女に何かあったら、そいつも『悪』認定するけどね?」

「ラ…いえ、貴方は私たちの中では、やはりとても人間に近いのだと思いますよ」