Chapter01-05

記録者: Πολύτιμος λίθος ρουμπελίτης (ENo. 204)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-03 04:00:00

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  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

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「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

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──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


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「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
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「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
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「『存在価値と、無価値』だって。…僕から話そうか。多分、彼女と出会う前と、出会った後を分けたほうがいいだろうね」


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「『価値』は人間が定義するものだよ。功績であれ使命であれ、それは存在するからこそ左右される。
僕らは『存在』は『価値』ではない。そこに『存在するようになった』から『そこに居る』。そのことに意味なんてものはないんだ。
意味があるとすれば、僕らは植物とともにある種族。植物を介して生まれ、その植物が存在の全てを司る。だからその植物の名前、性質、あらゆるものの影響を受ける。
それは『価値』とか『存在意義』じゃない。僕らの『在りよう』であって、生まれ持ったものなんだ。変わりようがないし、変えられない」

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「僕らはその植物がないと存在できないし、その植物があるからこそ現存できる。だからこそ植物の在りように多大な影響を受け、変質することもある」


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「それを他者との関わりを通じて、変えようと試みるものもいます。
そしてまたその変化が起こり得るのも、私たちの種族の特徴なのです」

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「どんなものでも『不変』はありませんから。
植物の意味も、在り方も。そしてその花に冠する花言葉でさえも、時とともに変わりゆくものなのです。
それは自己を肯定しているというより、存在から切り離せないものなのですが…、それがあるからこそ、私たちはいま、ここに居続けることが出来るのです」


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「そして。
僕はいま、人間の女の子と過ごしている。
だから僕の今の価値観は『その世界で存在できること』も含まれるし、彼女が僕の存在を認めてくれること、そこに居て欲しいと想ってくれる『願い』こそが、今の僕の、その世界での存在意義だよ」