Chapter01-02

記録者: Πολύτιμος λίθος ρουμπελίτης (ENo. 204)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-03 04:00:00

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「……」

あなたの回答を──若しくは無回答を聞き、
ソレは少しじっとあなたを見詰めていた。


  ──カシャ


それから、また先にあった音が一つ。
撮ったものを確認するような間の後、深々と頭が下がった。

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「観測結果が不明瞭です。
 当機からはあなたの言葉を完全に受け取る事は難しいようです」

どうも椅子の〝こちら側〟と〝あちら側〟では具合が違うようだ。
あなたの言を確実に受け取れているかは、あちらもこちらも分かり得ないだろう。

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「では観察対象、続けましょう」


されどコレにとっては断片でも構わないのか、きゅり、とまたレンズがあなたを向く。


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「環境データの取得。あなたの属する世界を説明してください」

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「あなたの世界では、“普通”とはどのような状態を指しますか?」


──あなたは、異世界の存在にあなたの世界のどのように説明しますか?


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「当機の世界にはこれと言って特徴があるとは考えられません」

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「当機は異世界に対する情報を持ちません。
 よって、何が特色であるかを判断するには情報が不足しています」

──基準や比較対象が無ければ、世界の比較とは難しいものだろう。
自らの世界に当たり前に存在しているものが、他の世界では存在しない可能性すらある。
自らの視野では存在しないものが、世界の中には存在している可能性だってある。

つまりは、この質問は不毛なものではある。
……比較対象が無い限りは。


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「──あなたに回答していただくためには、
 当機の世界を説明せねばなりません。
 よって当機は、平均的な一般家庭の生活環境についてご説明致します」


もしあなたが回答に窮しているのであれば、
オブザーバーの言うものを参考に、比較して述べると良いのだろう。

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「朝9時に出社する方は、平均して朝7:22に起床致します。
 家事仕事用の自立稼働人形が6時には稼働を開始しており、
 起床し着衣を着替えた後には朝食を摂取する事が可能となります。
 起床から出勤までには平均28分31秒の時間が経過しています」

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「出勤には電車やバス──公共の車両を利用する方、
 運搬用人形を利用する方ほか、徒歩で出勤する方など様々です」

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「……コンプライアンスに基づき、出勤後については
 当機から申し上げる事は出来かねます」


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「7日を一週間という単位にし、
 うちの4日が平日、うちの3日を休日と制定されております。
 居住する地は球体の惑星、衛星は現在1つ観測されております。
 衛星及び他の惑星の生活様式については当機のデータベースには御座いません」



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「……以上の内容は参考にする事は可能ですか?」



……とはいえ、此れをなぞらえる必要も無い。
あなたの自由に回答してよいだろう。

Answer
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「わたしたちの世界、だそうです。
説明して差し上げられますか?」

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「なんとか頑張るけど…僕でも出来るかな」


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「僕らは、深い森の奥地に住んでいる。森の植物より生まれ、森の植物に宿って生活しているから。多分そのあたりは、精霊や妖精と聞いて想像するものと、きっと変わらない」

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「でも僕らは様々な世界を旅している。
かつてのように、森で全てを賄えるほど、肥沃な森が広がっている世界は、そう多くはない。
対して僕らはたいていは長寿だ。増えれば増えるほど、住む世界は狭くなってしまう」


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「だから…
僕が最初に生まれた世界、という話であれば。
決して広くはない森で、そして少数の精霊に囲まれて過ごしてた。皆が一箇所にいることは少ないから、たいていは間接的に連絡を取り合っているけれど。
…僕も今はもう、そこで暮らしていないしな」

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「そうですね。各々が今住んでいる場所が『自分のもといた世界』です。
でも生まれた世界というのは誰にでもあります。私達森の精霊アルセイドは、たいていは森の多い場所で生まれますから、森の中が私たちの世界になりますね」

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「その世界での『普通』っていうと…なんだろうな?」

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「私たちは精霊ニュンペーであることと、私たちと同じ森の精霊アルセイドは必ず何かの植物から生まれ、その影響を強く受けること…ではないですか?」

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「ああ、なるほど。そうだね。それが僕達の『普通』だ」

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「あとは…男性型の精霊ニュンペーは珍しいってことくらい?」

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「貴方の場合はさまざまな点で珍しい個体なのですけれど…」

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「そうなんだ。彼女にもそれは伝えておいた方がいいかな」

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「でも、男性型の精霊ニュンペーが人間の女の子が好きなのは、貴方も変わりませんでしたね」

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「うん、そうだね…
…そういう理由で彼女を選んだわけじゃないからな?」

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「ええ、それはわかっていますが…
ずいぶんと噂が一人歩きしてしまったようで」

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「あいつらに人間の女の子が近くに居ると知られたら、彼女が危ないんだよ。だから手を出されないように牽制として…
特にその…多分未経験の…人間の女の子だったから。手を出されてから後悔しても遅い」

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「貴方のお嫁さんにした噂であれば、誰も手を出しにいきませんものね。嘘をついている訳ではありませんし」
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「まだ『お嫁さん』じゃないんだけどね…あいつらが手を出さなくなるなら、その方がいいから、別にいいや…」