初めて出会ったのが、私が10歳くらいの時だったかな。
その日も、父の仕事を見させられる目的で街に来ていた。
街で暮らす人たちの中でも貧しい(昔の感覚だとお金がない)人たちのところまで行って税金を取るなんてと思っていたのも覚えている。
やっぱり見るの嫌になったからって、隙を見て父の元から抜け出そうとした時に…
離れた場所にいた子どもと目が合った。
私より年下で、今日訪れた1区に住んでいる子なのかぼろぼろで、その時から長く伸ばされていた髪の毛がボサボサになっていたのもよく覚えている。
その子の近くに親らしき大人は、いないみたいだった。
同じ街なのにどうしてこんなにも環境が違うのか、どうして子どもがひとりこの場所で過ごしているのか。
初めて出会った私にとって、わからないことがたくさん浮かんだ。
何よりも、あの子はこのままどうやって過ごしていくのか、最悪…なんて思ったりもした。
もしも力があったのなら、私は助けられたのだろうか。
力。誰かを脅かすような力。じゃなくて、
誰かを助けられる力が欲しかった。
欲しかったから、私は父に初めて"ねだった"。
言い方はあまり良くないけど、父から見れば当時から悩ました私がねだったように見えなくもないんだろう。
けど、小さかった私にとってはそれが"助ける力"になると思ったから、
私は、"彼"を自分のメイドとして迎え入れた。
それが今でも正しかったことなのか、"助けた"ことになれたのか、正直わからない。
だけど彼は、私が家出することを決めた時も、家出して街の外まで行った時も、今も私と一緒にいてくれている。
ただ私に従っているだけなのか、本当に信頼してくれているのか。
そんなことはわからないけれど、いてくれるのなら私は守らないといけない。
そのためには力をつけないといけない。
ノブレスオブリージュというのだろう。
…ねぇ、
これからも、こんな私のもとに、いてくれるよね…?