魔女はその身に魔力を宿しており、不思議な力を使って人々を翻弄し貶める。
悪魔は言葉を巧みに操り人々を篭絡し欲望に堕落させる。
どの文献も同じような事を書かれていた。
確かにその通りなのだろう。
これは悪魔としての血のせいのようで、僕は生まれつき常に声に魅了が掛かるらしい。
人を甘言で誘惑して魂を喰らう、悪魔ならではの進化。
彼らも生きる為にやっている。食べるものが他にもあるならきっとそうしたに違いない。
魂を食べた事は、過去に何度かあるけれど。
慣れていないからか美味しいとは思わなかった。
人によって魂の味が違う。恐らくその人が歩んできた人生により変わるのだろうと思う。
悪魔が何故人を誑かし、欲を掻き立てるようにさせるのか。
魂の質を上げる為だ。魂に欲望という餌を与え、肥え太らせる。
そしてその美味い魂を喰らうのだと。
でも僕はそれを良しとしない。
だから、無効化する魔法をかけて人と会話をしている。
それが癖づいてしまった。
最早呪いのようなものだろうが、慣れてしまえば大した事ではない。
『それ』に気付いたのは少年時代。
つい話の弾みで言葉にしてしまった事を後日、事件として帰らぬ人となった知人を野次の一人として見ていたから。
それから防護魔法を掛けるようになった。
二度と犠牲者を生まない為に。