人の想像というものは無限大だ。
青々とした草原。無限に広がる青空。静かに流れる川。木々のざわめき。小鳥達の囀り。
例えどんなに狭くて暗い部屋の中でも、頭の中で想うだけで、世界は創造される。
そうして、彼、もしくは彼女は旅に出た。
様々な世界を巡った。
よくある中世ファンタジーみたいな剣と魔法の世界。
植物が進化し、ビルのような高さの花々が喋りかけてくる世界。
人型のクッキーやキャンディが暮らす、全てがお菓子で出来た世界。
捨てられ、無用となったおもちゃ達が細々と暮らす世界。
かつての文明が水中の中に沈み、魚達が新たな人類となっている世界。
様々な世界で様々な人に会い、時にピアノを引き、お金を稼いでいた。
空腹も睡眠も全て忘れ、空想を彷徨っている。
その目に月を浮かべながら。
そのうち、現実も、空想も、全ての境界が曖昧になって、混ざり、溶けていって。

「…………だから、僕が夢になったんだ」

「全部、全部、もう終わったことだけれど。もう元に戻すことは出来ないけれど。
それでも、境界を敷く為に。『あなた』を守る為に。月を護る暈になったんだ」