あまり大した話でもない。
人間と呼ばれる種族が生きる世の中ではありふれた物語未満の一つ。
【自分の人生の主人公は自分】だと、どこかの小説や哲学書に書いてた一節を思い出す。
そんな言葉を鵜呑みにして、万能感を抱えたまま生きて、どこにでもいる少女だった頃。
友達も恋人もいて、将来の夢もあって、本当にただただ幸せな日々。
周りの全てが、己に牙を向けた時。
非難する恋人の声。
泣き崩れたかのような友人の声。
嘲笑うように取り囲む周囲の声。
堪らず駆けだした先、悪意が邪魔をした。
足が縺れる、身体が傾く。
今でもスローモーションのように瞼に焼き付いて離れない光景。
『悪魔の処刑だ』
群衆にとって私の姿は娯楽でしかなかった。
裏切りは正義、真実は悪。
悪役の目の前に広がったのは、長く降りる階段。