足りない話 | 記録詳細

足りない話

記録者: 木田瞳 (ENo. 42)
公開日: 2025-10-19

4年くらい前ねー、あたしがこの辺に引っ越す前の話なんだけど。

当時は趣味で写真撮るのが好きでさ。
別にスマホのカメラでも良かったんだけど、専用のが手元にあると嬉しいのよー。
ゴテっとしてない市販のデジカメ持って、休日になると公園や駅前をぶらぶらしながら、なんとなく良いなーと思った場所を撮影してたの。

まあ大した技術があるわけでもなく、ただ撮っては家で見返して、手ブレしてるなぁとか偶に思いながら、ひとりで楽しんでるだけの地味〜な趣味なわけ。

「いいじゃない!かわいい趣味ね〜」
「当時はって、今はどう?」

してないよー。
でさ、春先の肌寒い日に、何となく電車で二駅先の商店街を歩いていたら、横に逸れた道から小さな神社を見つけて。

狭い境内に、鳥居と古びた社と狛犬の置き物。
手入れが行き届いてないっていうかぁ……誰も寄ってなさそうで、供え物の一つも見当たらないの。
……、

「……寂しい所ね」

そ。寂れてたけどさ、ちょうど夕日が差し込んで綺麗だったから、ああ、いい絵になるかもと思ってカメラ向けたんだわ。

外からまず一枚。
鳥居をくぐって、全体を一周かな?四枚くらい撮ったかも。
……、
…………、

ちょっと怖かったような気もしたけど、別に何か起きたわけでもなく、10分くらいで撮影は終わり。
そのまま帰って、写真は普段通りまあ暇な時にでも見ようかなって。
………………、

(嫌な予感)

「あの、それからは?」

仕事が忙しくなってねー、毎晩へとへとで帰るからカメラ触らなくなっちゃった。
すぐ手を伸ばせる場所には置いてたんだけど、全然。
後から引っ越しして少しだけ落ち着いても、ずーっと……
そのせいか、最後の四枚は何写してたかすっかり思い出せなくって。


久々に見よっかなってカメラ持ってきたけど、一緒に写真見る?
嫌…

嫌?

ごめんなさい嫌は言い過ぎた!今は遠慮しておこうかな〜って」
「あのね〜〜(思考中)
触らなくなってから充電はしてた?」

「もしバッテリーの残量が無かったら……
充電出来る家電屋・・・さん知ってるから、そっち寄りましょ!先にね……」