念願叶って | 記録詳細

念願叶って

記録者: 道化師 (ENo. 101)
公開日: 2025-10-19

あれからどのくらいの時間が経っただろう。
幼い子はいつしか大人になり、独学で様々を勉強し、まだまだ不慣れなまま人間社会に紛れて生活をしていた。
勿論大変な事も数え切れないほどあったし、冷たい人間も優しい人間も居た。
家に来ないか、と手を差し伸べてくれた人も居たが。丁重にお断りをしている。
腹の底で何を考えているのか分からない。人間は心の底から信用が出来ない。
しかし仮に、本当に善人だった場合。
時世を考えると『魔女と悪魔』の子である自分を匿った罪として死刑になる可能性だってあり得る。
だから遠ざけるのだ。誰も巻き込みたくないから。
優しいヒトが死ぬのはもう見たくない。

そんな中で、幸いにも幸運が訪れた。
幼い頃より年月が経っている分老いてはいるが、母を弄んだ挙句惨たらしく殺した男を見かけたのだ。
逃がしてなるものかと追いかけ、言葉巧みに人気のない所に連れ込んで。人除けの魔法を周囲に。

「…■■年前の時、森の家に住んでいた魔女を殺した事を覚えておいでですか」

答えられた言葉には、思わず暫く絶句した。
『そんな事覚えていない』と。
後ろ手に組んだ手に、血が滲む程力が篭った。

「あぁ、いや失礼。そうですか。覚えておいでではないと」

自分が殺した虫の事を覚えているのかと尋ねているのと同義だろう。
なるべくにこやかにいきたかったが。ああ、やはり赦せない


「お前が忘れていようとも、僕は覚えている」


袖口からナイフを出して、一投。
逃げないように足に刺す。
上がる悲鳴、立て続けにもう一投。
地面に縫い留める。

「僕は彼女の実の子どもだ。お前が何をしたかをこの目で見ていた」
「だからこそ赦せない。…災難だったな」
「首は家族の元にサプライズとして贈ってやろう。愉しみだな、実に」

歪む口元は正しく悪魔であっただろう。

存分に『仕返し』をした後は、彼の家族の元へプレゼントを届けに行った。
その際に軽くタネを仕込んだ。この家を呪う為に。

呪いは今でも続いている。これからも続くだろう。

悪魔が居る限り。