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自分は今、『何もしない』をしている。
いつからこうしているかはわからない。もう思い出せない。
けれど、ずっと、ずっと、こうして月を見ている。

丸い満月の夜になると、いつも思い出す。あの時のことを。


私と僕は、生まれた時から常に一緒に生きてきた。
ずっと、ずっと、一緒。これまでも、これからも。
死ぬ時も、一緒。そう、思っていた。


それは、不慮の事故だった。偶然の悲劇だった。
突然の事故で『光きみ』は潰え、永遠にいなくなってしまった。

幼い片割れの突然の別れに、誰もが皆悲しんでいた。死を悼んでいた。
けれど、時がたつに連れ、死の悲しみは薄れ、忘れ、皆大人になっていく。


皆、忘れてしまったの？悲しんでいないの？
私の心は、未だにあの時に取り残されたまま。
私は、私だけは、『きみ』を忘れることなんて、できない。


そうして、『光きみ』は生まれた。自身の心の中に。


『月リュン』と『光クレー』は、生まれた時から常に一緒に生きてきた。
そして、これからも。『月リュン』と『光クレイ』は、死ぬ時まで一緒。

私が夢見た、空想上の『きみ』。
それでも私は、幸せだった。
それが空想だとしても、皆にどのように言われても、これからもずっと一緒にいられるのだから。



「月へいってくる」



それは、突然のことだった。
『きみ』はそれだけ言い残して、私の前から姿を消してしまった。
どれだけ探しても、世界中のどこまで行っても、『きみ』はもういない。

光は再び、遠くへいってしまった。
もし、未だにどこかにいるのだとしたら。『きみ』の言葉をそのまま信じるのなら。



僕あなたは今も、月の上にいる。
私きみ　は今も、月を見ている。

「『きみ』のことを忘れない。忘れたくない」

「だって、『私』が『光きみ』のことを忘れたら、誰があの子が生きていたと証明するの」