街の話 | 記録詳細

街の話

記録者: モニカ (ENo. 18)
公開日: 2025-10-13

私が住んでいた街は、大きな街だった。
いいえ、その街しか知らなかった私にとっては、そこは大きな街であった。

街が大きければいろんな人たちが暮らしていて、それぞれの生活を送っている。
いろんな人たち、と言っても普通の人間で、ただ階級が違うだけ。
力ある貴族が街の中核を担っていて、力ない人たちが守られながら暮らしている。
良く言えば"楽園"とも呼ばれていた。

悪く言えば閉鎖的で差別的、自分たちとは違う者には排斥的。
そこにいる人たちが街で保たれている平和が崩れることが何よりも恐れていたからだ。
こうして外れてしまった"人"たちは、地下に追いやられるか、墓場に行ってしまうか、または良いように扱われるか。
今の私にとっては、助けようにも助けられない目を瞑ることしか出来ない現実がそこにはあった。

残酷にもそのことを知ったのは、私が初めて街に降り立った時だった。
私が家出する原因のひとつだった。