親子に問題なんてつきものさ。
それは世界を変えても、時代を変えても、人間が血を繋いでいく存在である限り逃れられないもの。
私と父にも、それはある。こんな時代にはありふれて、社会的にも問題視されている一つ。
母子家庭や核家族の様な、そういった大きな括りの問題に、私と父は対面している。
正直、私は恵まれた立場だ。
父が会社経営している事もあり、シッターさんも使用人もいた。父と対面した機会はあまりない。いや、お互いしたくはないと思ってるのではないだろうか。
年齢の差で形は違うとはいえ、同じ顔。
父は非常に忙しい。叩き上げの一代で成した業績はめざましく、当然それにあやかろうとする人もいたのだろう。
それが、父の元妻だったらしい。息子を授かったまでは良いものの、何か大きなトラブルがあって離婚となった。私が生まれる前の話だから、何のトラブルだったのかは聞かされてない。
息子の引き受けも、相当揉めたそうだ。父は世継ぎが欲しかったし、元妻も忙しい父の下には置いていけないと大騒ぎ。結局息子は元妻に引き取られてしまった。
その時から、父は女を信用出来なくなったそうだ。男女平等のご時世で男女で差別するなんて馬鹿らしい。ただ、同性愛者になったわけでもない。孤立していったが正しいか。
ならば、世継ぎをどうしようかと考えた時。
世間の流行であり、一人でも子供を作れる手段でもあり、上層階級では当たり前になりつつあった技術。
自身のクローンを作る事を選んだ。
つまり、父とは呼んでいるけども、私と父のDNA配列は全て一緒。
子と呼ぶにはあまりにも同じで、親子と呼ぶのも烏滸がましい。
ただ、それでも私は私だし、父は父だ。
私はその境界をしっかり認識している。が、父はどうだろう。
この認識の差が、世間にはありふれていて、問題となっている。
子クローン問題、と呼ばれている。
当たり前に書いたけど、そう。
クローンはありふれた存在さ。今ではこの国の半分がクローンだなんて言われている。
私のように赤子から生まれる従来のクローンを旧型。
細胞を積み木の様に組み立てて大量複製するのを新型と呼ぶ。
100年前、クローンは禁忌だったらしいのに。
今ではこの有り様さ。