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記録者: 山城 慈眞 (ENo. 183)
公開日: 2025-10-08

 親子に問題なんてつきものさ。
 それは世界を変えても、時代を変えても、人間が血を繋いでいく存在である限り逃れられないもの。

 私と父にも、それはある。こんな時代・・にはありふれて、社会的にも問題視されている一つ。
 母子家庭や核家族の様な、そういった大きな括りの問題に、私と父は対面している。

 正直、私は恵まれた立場だ。
 父が会社経営している事もあり、シッターさんも使用人もいた。父と対面した機会はあまりない。いや、お互いしたくはないと思ってるのではないだろうか。

 年齢の差で形は違うとはいえ、同じ顔。

 父は非常に忙しい。叩き上げの一代で成した業績はめざましく、当然それにあやかろうとする人もいたのだろう。
 それが、父の元妻だったらしい。息子を授かったまでは良いものの、何か大きなトラブルがあって離婚となった。私が生まれる前の話だから、何のトラブルだったのかは聞かされてない。
 息子の引き受けも、相当揉めたそうだ。父は世継ぎが欲しかったし、元妻も忙しい父の下には置いていけないと大騒ぎ。結局息子は元妻に引き取られてしまった。

 その時から、父は女を信用出来なくなったそうだ。男女平等のご時世で男女で差別するなんて馬鹿らしい。ただ、同性愛者になったわけでもない。孤立していったが正しいか。

 ならば、世継ぎをどうしようかと考えた時。
 世間の流行であり、一人でも子供を作れる手段でもあり、上層階級では当たり前になりつつあった技術。

 自身のクローンを作る事を選んだ。

 つまり、父とは呼んでいるけども、私と父のDNA配列は全て一緒。
 子と呼ぶにはあまりにも同じで、親子と呼ぶのも烏滸がましい。

 ただ、それでも私は私だし、父は父だ。
 私はその境界をしっかり認識している。が、父はどうだろう。
 この認識の差が、世間にはありふれていて、問題となっている。

 子クローン問題、と呼ばれている。

 当たり前に書いたけど、そう。
 クローンはありふれた存在さ。今ではこの国の半分がクローンだなんて言われている。

 私のように赤子から生まれる従来のクローンを旧型。
 細胞を積み木の様に組み立てて大量複製するのを新型と呼ぶ。

 100年前、クローンは禁忌だったらしいのに。
 今ではこの有り様さ。