「ねぇ、あきらっち。私がいなくなってどれくらいたった?」
仕事を珍しく休んだ日の夜。
突然の電話が来たと思ったら、アレンからだった。
「え~?何突然。今日仕事休んだでしょ~、も~大変だったんだからね~?」
「……一日だけ?私がいなかったの」
「え?そうだけど」
「……ねえ、来て欲しいんだけど、今すぐ」
は?
いやなに?
明日も仕事なんですが。終電間近なんですが。
「流石に終電近いから電話で聞くしかねーぞーアレン~」
「えぇ~~、明日の昼ランチ奢るからさ~~!」
「アタシの仕事の案件手伝い」
「ぐっ……!背に腹は代えられない……!!よし、それで手を打とう」
「はいはーい、そんじゃ30分後くらいにつくからしくよろー」
電話を切り、急いで支度。
お泊り会とか定期的にやってるから別にいいんだけど。
歯ブラシとか着替えとか急いで詰めて向かおう。
……あんたが急にいなくなったの、なんか違和感あるし。

「ねぇ仕事やばいよねどうすればいい!?」

「まず男連れてるのどうにかしなよアレン!!」
端的に言うと。
とある別世界にちょっと飛ばされて。
そこで拾って連れ帰ってきたらしい横にいるネクサスって男と。
三重に住んでるシホって男と約束したって話だった。
仕事はそれでいなかったらしく、
今目の前の彼女は仕事を無断欠勤してしまった事が盲点で慌ててるらしい。
多分そのシホって奴も働いてりゃ今頃大慌てだな。大惨事。

「今丁度流行り風邪はやってるから熱出て動けなかったってことにしとけばー?」

「あ、それかぎっくり腰なら納得いくんじゃない?」

「二十代でぎっくり腰を理由はやだなあ……」

「まあ普通に風邪でいいと思うぜ~。手続きしなきゃでしょ、住む場所」
それもそうか、と話はまとまって。
アレンは結局流行り病の休養で有給つかって休む扱いになった。
その期間、ネクサスって奴はちゃんと住処が決まって。
仕事も決まり、戸籍とかもなんかどうにかしたらしい。就籍って言葉初めて聞いたよ。
なんやかんやあってどうにかできた、って感じらしい。
……まあ、それは、別にアタシが知ったこっちゃないんだけど。
で、そのなんやかんやが終わって、仕事にもアレンが戻ってきたのはいいんだけど。

「……は~~~~~~~」
重症。
しかもかなりの。
帰ってきてからすぐはまあ吹っ切れたかのように仕事もバリバリやってたけど。
意外と要領いいんだよね。ちょっとむかつくけど。
一ヶ月くらいからこの調子だし、
半年経ってから本当に休み時間にスマホを見ては喜んだり溜息吐いたり。
いちいち横で見ててせわしないんだよね。これ。
それだけならまあまだいいんだけど。

「ねえあきらっち聞いて。ニュースサイトの関西企画私今回留守番だって~~!!」

「三重じゃないんでしょ~、なら別にいいじゃん」

「いや帰りとか休み取って寄る理由になるじゃ~ん!経費で落としたいじゃ~ん」
こんな調子で、永遠に三重の話とか。シホくんがどうだのとか。
毎日毎日喜怒哀楽を見せる様にコロコロ表情を変えて話してくるもんだから。
アタシゃ三重の呪いにかかってるんじゃないかなって思ってる。

「あー」
そんなことよりスイーツ食いてぇ。
カフェ行くか。