ピンク、青、黄色のパステル色の雲。
頭上を見上げると、大きな月。
月明かりの下には、大きなクラシックピアノ。
あなたときみは、二人で一つのピアノを弾いている。
左手のあなたは、丸い月のように、慈しむように、優しく。
右手のきみは、無邪気な子供のように、光となり夜空を飛び回る。
「ねえ」
「私達、こうしてずっと、二人で一緒にピアノを弾けたらいいのにね」
「私は、行く先々でピアノを弾き、お金を稼いでいるけれど。
それでも、きみのいない音は、どこか物足りないんだ」
「……そうだね」
「でも、ここなら二人でピアノを弾ける」
「今だけは、時を忘れて、ずっとずっと、好きな曲を弾こうよ。
ねえ、次はどんな曲を弾こうか?どんな曲でもいいよ。あなたの好きなように」
「…………じゃあ、次は……」
どこかから楽譜を取り出し、譜面台の上に置く。
二人が奏でる優しいピアノの旋律が、一面に響き渡る。
ここには、あなたときみしかいない。
やがて、ピアノの音は、色は、淡い朝の光に溶けていく。
誰かの言葉は、ピアノの音と朝の光に、掻き消された。
「ごめんね」