Lack Of Comprehension | 記録詳細

Lack Of Comprehension

記録者: 宮野梨花 (ENo. 6)
公開日: 2025-10-05

別に、大した話じゃない。
世界を救ったとか、魔法が使えるとか、王様だとか……。
ここのカフェの人達は凄い。辛い過去の話は置いといて、世界や自分のことを素直に話せる。
けれど私には知らないことが多い。だから__

「RIKA、大丈夫?」
目を覚ます。うたた寝してたみたい。
「お前頑張りすぎじゃないか?課題もあんのに。」
メンバーの一人『NAOKI』が心配してくる。相変わらず威圧的だけど。
「大丈夫だよ。ライブも近いし、もうひと踏ん張りってところかな。」
手縫い針で縫ってできた、少し歪な模様のような笑顔。
それを見た相手NAOKIは、やはり表情が晴れない。
「SOSは早く言ったほうが損しねぇぞ。」
「だからだいじょう」
「倒れてからじゃ誰も気づかねぇんだ。他の奴らも呑気にしてるが、お前のことを一番に心配してる。休みたきゃ休め。誰も文句言わねぇよ。」
溜息を吐いたあと、メンバーのいる方へ戻って行った。
あっちでは何か盛り上がってるみたい。
「……。」
意外だった。自分のことを心配していること。メンバーがそう思っていること。

取り繕わない、誠実な心が欲しい。
素直に言える、その勇気が欲しい。
自分だけじゃなくて誰かを心配する、その優しさが欲しい。
自分には足りてないところが多い。
「あっ!」
考えているうちに、歌詞がぼんやりと浮かんできた。

お気に入りのリング付きノートを開いて、歌詞を書き始めた。