🌒 | 記録詳細

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記録者: そこに有る月 (ENo. 79)
公開日: 2025-10-05

華やかで、どこか幻想的な景色が心の中に広がる。
城塞に囲まれた都市の中を、魅力的な仮面マスク踊り子ベルガマスクが行き交う。
リュートの音に合わせ、踊る幻想的な仮装達。

「こんなに楽しい景色なのに、何であなたはそんな顔をしているの?」
「ああ、とても素晴らしくて、夢のような景色だ」
「けれど、こうも思ってしまう。
彼ら、彼女らは華やかな仮面や仮装の下で、どこか悲しげに見えるんだ」

「耳をすませてみて。
短調の調べで歌うのは、勝ち誇った愛や成功した人生」
「けれど、自らの幸せを信じていないようで。
その歌声は、月の光の中に溶けていく」

爽やかな、夢のように煌めく、青い空の下の光。
軽やかで、煌めいていて、胸が高鳴るようで、けれど、ほんの少しの不安が残っていて。
華やかな午後。けれどそれは満ち足りたものではなく。
陽が落ちていくにつれ、心の中に焦燥感が広がり、世界が夕焼けの赤に染まる。
そして、静寂。陽は完全に沈み、深い夜の街を月の光が優しく包み込む。

「そう、どんなに華やかな貴婦人の横顔の裏に不安や悲しみ、焦りの一面があるように。
輝く陽はやがて落ちて、暗い夜の中に月が浮かぶ」
「ずっと、ずっとこの穏やかな夜が、続けばいいのにね。
悲しみに寄り添い、拭ってくれる、静かな月夜が」

「けれど、そうはならない。そうはならないんだよ。
月だって、光がなければ輝くことすら出来ない。光がなければ、その目に月が映ることはない」
「永遠なんて、ないんだよ。きっとね」

華やかな昼も、穏やかな夜も、永遠ではない。
月が沈み、朝の陽の光が差し込み、夢から目覚めれば、またいつも通りの平坦な日々が繰り返される。
けれど、今だけは、月の光が悲しみを拭う、静かな夜に身を委ねたい。

悲しくも美しい月の光の静けさが、
木々の小鳥たちに夢を見させる。
そして、噴水をうっとりと啜り泣かせる。
大理石の像の間で優しく吹き上げる噴水を。






「それでも、私は」


「『きみ』が見えない昼よりも、『きみ』が一緒の夜がいい」