幸せな
人間は笑顔であるらしい。
笑顔じゃない人は不幸であるらしい。
僕は幸せそうなヒトが好きだ。
子ども、大人。男、女。若者、老人。
皆笑顔で居て欲しい。僕が幸せではないから。
端末が震える。
明日の
道化師としての仕事の段取りだ。
それを眺めながら、鼻歌混じりにテキパキと仕事道具の手入れを始める。
ジャグリングボールやバルーンに穴は開いてないか。
トランプやピンに傷はついてないか。
ナイフの切れ味は落ちていないか。
「~♪」
くるりくるり、手元でナイフを回す。
そうしてノールックで壁に向かって投げた。
トス、と音を立てて突き刺さる。
そこには一枚の顔写真。
顔は覚えた。居場所の把握もしている。
時間帯の行動も。
.webp)
「楽じゃないよなぁ…」
マスクをつけて、溜息一つ。
さぁ。ボヤいても居られない。
そうして徐に椅子から立ち上がり、部屋を出ていく。
静かに扉が閉められた。
時刻は深夜。天気は雨。
雨音に一つ、影が消えた。